何が彼女をそうさせたか クリティカル・エディション [DVD]

何が彼女をそうさせたか クリティカル・エディション [DVD]

何が彼女をそうさせたか クリティカル・エディション [DVD]

DVD
監督:鈴木重吉
出演:高津慶子
出演:藤間林太郎
出演:小島洋々
出演:牧英勝
メーカー:紀伊國屋書店
発売日:2008-03-29

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カスタマーレビュー

ロシアからの里帰りの一本

 ロシアから不完全ながらも何本かの映画が里帰りした。これはその一本。冒頭とラストは欠落しているが、字幕で補ってある。
 さて、それまでは文献のみでその存在を知る程度だったが、実際観てみるとサイレント作品でありながら、内容は褪せていない。何故転落していくのか、フツフツと怒りがわいてくる。社会の矛盾が根本だが、偽善者が何と多く登場することか。カット割もスピーディでテンポもいい。

30年代幻の傾向映画が甦る!

大不況にあえぐ日本。経済的に貧窮し、少女すみ子(高津慶子)は、父親
の手紙を携えて、伯父一家の世話を受けることになる。しかし、伯父一家
も貧しい上に大所帯で、すみ子は肩身の狭い日々を送る。そして、ついに
は、すみ子は曲芸団に売り払われてしまう。サディスティックな団長の下
での奴隷のような生活。劣悪な労働条件下で、団員たちの怒りも頂点に
達し、団長を襲って逃げ出してしまう。それに乗じて、すみ子も逃げ出し、
新しい人生を歩み出そうとするが、それはさらなる転落への幕開けでも
あった…。
藤森成吉の戯曲を基に、帝国キネマ(帝キネ)が映画化したプロレタリア的、
左翼的主題を扱った、いわゆる「傾向映画」の大ヒット作。当時としては異
例の5週間興行という快挙を成し遂げたそうだ。30年の劇場公開後、35mm
ネガ、ポジとも失われたと考えられていたが、帝キネ社長の孫にあたる山
川暉雄氏の執念とも言える探索の末、90年代前半に、ロシアのフィルム・
アーカイヴ、ゴスフィルモフォンドに所蔵されていた上映ポジ(前半と後半
欠落/ロシア語インタータイトル)を譲り受け、映画関係者の協力で復元さ
れた版。
傾向映画ではあるが、そういった思想的な部分を差し引いても、作品とし
て実に良く出来ている。監督の鈴木重吉は、国際志向が強く、当時の海
外作品を熱心に研究していただけあって、安いメロドラマに堕しかねない
「可哀想な少女」の話を、端正な構図、斬新なキャメラ・アングル、トリッキ
ーなキャメラ・ワーク、リズミカルな編集…などのモダンさ溢れる練達の演
出で、観る者をグイグイと物語に引き入れる。主演の高津慶子の可憐で
はかなげな美しさもいい。頻繁に捉えられる、涙を流した彼女の美しい顔
のショットが、このあまりに悲しい物語を象徴しているようで、胸に突き刺
さる。
もちろん、正直に言えば、オリジナルの形で、この伝説の作品に触れられ
ないのは、映画ファンとして悔しくもある。とりわけ、それまで社会の矛盾、
理不尽に忍従していたすみ子の怒りが噴出して、教会に放火するクライ
マックス(特典映像に、聖書を高く手に掲げたすみ子のスチールが収録さ
れている!)が失われているのは残念だ。しかし、脚本から丁寧に採録さ
れた字幕の補足で、その場面を想像することは出来る。クライマックスは、
観る者各自に想像する楽しみが残されたと肯定的に考えるべきだろう。
本DVDは、1997年の東京国際映画祭で、一般初公開された復元版プリ
ントからテレシネされたもの。今回のDVD化に当たり、更なるレストアが
されたわけではなさそうだが、30年の作品ということを考えれば(それも、
一度は失われたと思われた)、素晴らしい画質と言わない訳にはいかない
だろう。サイレント音楽の大家、ギュンター・A・ブーフバルト氏による楽曲
も良好。さらに、鈴木監督の貴重な教育映画の短編『闇の手品』(約35分)
も収録され、詳細な解説のリーフレットも同梱されているとなれば、もはや
文句の付けようがない。
限られた特殊上映でしか観ることが出来なかった本作を、ごく普通の映画
ファンに向けて届けてくれた紀伊國屋さんの素晴らしい企画に心から感謝
したい。

For English language speakers

Although not specified here, this is the English language subtitled version, as confirmed by Kinokuniya.

悲劇的な、あまりに悲劇的な

喜劇の本質は悲劇にあり、「悲劇的であること」の度合いが強烈であるほど「喜劇的な」要素は色合いを増す。「シャボン玉ホリデー」のコントではないが、「お父っつあん、お粥が出来たわよ」という台詞を聞いただけで笑いがこみあげてくるのは、ハナ肇扮する老人が寝たきりで、ひどい貧乏である、という前提であるがこそ喜劇度が増すのである。この昭和初期の、左翼運動華やかりし頃の「傾向映画」の傑作、と名高い作品を観て思ったのはそんなことである。
この映画は喜劇ではない。ただ現代と言う時代から、この「悲劇的」映画を眺めると、あまりに悲劇的すぎて逆に喜劇的印象が襲ってくるのは、話が余りに理不尽で、大真面目に演じられているが故、である。理由も告げずに伯父さんの家に預けられたすみ子は確かに可哀そうであるが、相手の都合も考えず子だくさんな兄の許へ娘を送って、勝手に自殺してしまうすみ子の父親の行為は無責任そのものだし、自分の子供すら満足に育てられない伯父夫婦が彼女を曲芸団へ売った、からといって非難はできまい(むしろ女郎屋に売られなくて感謝しなければならない、だろう)。その曲芸団でも理不尽なイジメをうけて涙ながらに堪える姿は健気、といいたいが、いつ「同情するなら金おくれ!」なんて字幕が出やしないかはらはらする、のは私が馬鹿なTVドラマを観過ぎたせいか。やがて「戦艦ポチョムキン」の反乱よろしく団員の抗議の際のドサクサに紛れて逃げ出し、運命の悪戯で施設・小間使いと職を転々とするが、「社会の底辺を喘ぐ」ようには正直思えず、今の派遣社員の方が身分は悲惨、なように思えてならない。特に上流階級のお嬢様(?)が魚の骨を喉に引っ掛からせて苦しむシーン、「魚の骨を取ることもできない」金持ちを揶揄したつもりだろうが、「骨を取るのが面倒だから」魚が嫌いだ、平然と語る子供が多い現代では逆に当たり前すぎて笑う気にもなれない。
というところくらいまでは、まだ時代、を考えて笑うこともできるが、問題は後半で、都合よくかつての団員と再会し夫婦になったのは良いが、失業して金策が尽きると安易に心中を図ろうとする件である。何の努力もせず心中に同意する亭主も亭主だが、自分だけ助けられて修道院に入れられたすみ子が、些細なことからシスターに反逆して教会に放火する、のは正気の沙汰ではない。宗教の偽善性に反逆した、聞こえは良いが自殺を図って助けられたのに告白を拒否して火を放ったのでは、助けてくれた人に対する無礼極まりない仕打ち、ではないか。命を救ってくれた多くの人に対し、何の感謝の情も示さず、「恩を仇で返した」行為のように、思えてならない、が。
「スチュワーデス物語」にしても、関係者は大真面目で作ったそうだが、結果は抱腹絶倒の大・喜劇番組になってしまったのも、「異常な物語を大真面目に演じた」故である。この映画も時代を考慮しても、当時は大変な悲劇として観られたのだろうが、現在では前半は喜劇で、ラストは非常に後味の悪い作品に仕上がってしまっている。それは偏に、「異常な話を、皆が大真面目で」演じた故、である。サイレント映画独特の異様なメイクが、人間離れしていて異様、を超えて滑稽に見えるのが輪をかけている。
あくまで1929年の、資料的存在、として価値のある映画であり、保存状態の悪さからしても現代の価値観で観る映画、ではない。ただ90年代後半に発見されてよかったねぇ、80年代のバブル経済真っ盛りに公開されたら、「大爆笑の喜劇映画」と評価されたかも知れない、そういう映画である。

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